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Association of Sophian Teachers of English |
目 次 ASTE 設立25周年を迎えて Learner autonomyを主眼とした英語プレゼンテーションスキルの育成: A Study on Japanese Secondary School Students' Beliefs about English Learning お知らせ |
上智大学英語教員研究会(ASTE)が皆さまに支えられ、25周年を迎えます。ありがとうございました。
この25年を振り返ってみますと、英語教育界には激しい変化があったように思われます。また同時に吉田研作先生を始めASTEにたずさわり、その運営に協力してくださった方々も、それぞれの場で活躍されキャリアを積まれてきています。このような流れの中にあって、ASTEに集まり、そこから発信される英語教育関係の情報の質も変化してきました。
発会当初は、例会あるいはその準備会で、吉田先生がEFLやESL関係の情報を提供し、現場の教師が現場の情報を提供し、これらの理論・現実を止揚して英語教育について何らかの貢献をするべく努めていましたが、最近ではこの過程にたずさわる方々の立場や身分が変化し、話題がより広い範囲をカバーするものになってきているように感じます。言ってみれば、ASTE で扱われる情報が戦術レベルのものから戦略レベルのものに変化しているようです。そのような情報を求めて例会に参加される方もいらっしゃるようです。
立場に応じて必要となる情報が変わるのは当然ですが、25周年を迎えた今、新任の英語教員から超経験者まで含む ASTE としては、発会当初の理念である「日本の英語教育のあるべき姿を考え、かつ現場の英語教師にとって役に立つ情報を出す」ということを再確認し、初心に還り、かつ心を新たにして現実をふまえて進んで行きたいとたいと思います。
発会当初には想像もつかなかったインターネットという便利なものが自在に使えるようになりました。インターネットは空間的広がりを増すことに多大な貢献をしましたが、一方でコミュニケーションの質をも変え、物理的に同じ空間を共有して話し合う機会が減っても事足りると感じる状況を作り出しています。当然今後のASTEの活動にインターネットを利用することが増えて行くと思います。しかし、会としての「活動」という点から言うと、やはり会員が顔と顔を合わせてコミュニケーションを持つ方が、英語教育に携わる者の共同体として、同じ目標を持って共に活動しているという安心感を与え、使命感を支えるものであるように思います。
インターネットが存在する環境になった以上、それを利用することがASTEの活動の可能性を広げるものであることは間違いありません。そこで、以前の活動形態のよかった点でインターネットを利用できない部分はしっかり維持し、転換できる部分はおおいにインターネットを利用して会の活動をしていくのが現実的であると考えます。その意味において例会への参加の価値はいささかも減じてはいないと思います。ネット関係の充実もやっていかなければならない事項ですが、皆様とお会いし直接話ができる例会へ参加を強くお誘いいたします。我々が扱っているのは、本当の意味のコミュニケーションの手段である英語の教育であることを忘れてはならないと考えます。
次の30周年に向けて、さらに皆様のお役に立つ会として活動していきたいと思いますので、どのような形でも結構ですので、ご参加、ご支援くださいますよう、お願いいたします。
ASTE第137回例会 2005年10月22日 | 鈴木利彦(上智大学) |
はじめに
本発表は、2005年度前期に上智大学で実施したlearner autonomyを主眼とした英語プレゼンテーションプロジェクトについての実践報告である。プロジェクト終了後に実施した各アクティビティに於ける学習者自身の自己評価(self-assessment)についてのアンケート(retrospective evaluation)によって、このプロジェクトで学習者がどのようにautonomous learningの機会を生かして学習したかを調査した。
吉田国子(2003: 67)は、語学教育に於けるlearner autonomyについて次のように述べている。
近年語学教育のなかで重要視されるようになっている考え方に,Learner Autonomy がある。これは,学習者が自己の学習に責任を持ち,主体的に学習に取り組んでいくことを意味し,語学教育は究極的にはその目標に向かって行われるべきだという主張である。Learner Autonomy にはLearning Strategies(学習方略,各人の学習の進め方)とLearner Attitudes and Motivation(学習に対する動機付けや態度)の二点が深くかかわっている。
この記述は吉田研作(2002) の提示する"Open Seas Model"、その中でも特に"Reliance on Self - Learner-centered, active learning"の項目に一致するものである。自発的、自主的に英語学習を行っていくことがコミュニカティヴ・スキルの育成には大切なことであり、実際の学習の場でlearner autonomyを目標とした活動を取り入れることは"Open Seas Model"の実践の一つの方法である。
このようなプロジェクトでは学習者が活動の中でどれだけ"responsible learner"となれるかが成否の鍵となる。Scharle & Szabo (2000: 3)によれば、"responsible learner"の定義は、"learners who accept the idea that their own efforts are crucial to progress in learning, and behave accordingly"となっており、セルフコントロールのできる自主的学習者を意味している。プロジェクトワークでは「個人的な努力」と共に、「学習者グループ」内でどのような役割を担いグループ活動を活性化させるかも大きな要素であり、今回の試みではその点にも焦点を当てている。
1.Learner autonomy in ELT, group dynamics and self-assessment
語学教育におけるlearner autonomyの重要性について、Benson (2001:1)は以下のように述べている。
As the theory and practice of language teaching enters a new century, the importance of helping students become more autonomous in their learning has become one of its more prominent themes.
基礎レベルで学習者が教師からしっかりと教科指導を受け、実力を養成することの重要性は疑いのないところである。しかし中・上級レベルでは、教師が与える以上の事柄に目を向け自ら学び取る姿勢を身に付ける必要が出てくる。Autonomous learningはこの点で学習者の自主的な学習姿勢の養成に適している。Autonomous learningを通じて、学習者は以下の学習態度を習得することが期待される。
Learner autonomyの追求において、グループワークは一つの大きなテーマである。Scharle & Szabo (2000: 8)は"cooperation and group cohesion"という項目で次のように述べている。
Promoting cooperation in the classroom affects learner attitudes in several ways. It encourages the learners to rely on each other (and consequently themselves as well) and not only on the teacher. Group work also creates opportunities for feedback from peers: learners will do things to please the group rather than to please the teacher. ノ These then are the building blocks of responsible attitudes on the part of the learner.
このプロジェクトでは活動中のself-assessmentを行うことはできなかったが、プロジェクト終了後すぐに実施したアンケート調査で、学習者に自らのパフォーマンスを評価させた。
2.プロジェクト、retrospective evaluationの概要
このプロジェクトは、2005年前期に上智大学の「英語中級I(話し言葉のコミュニケーション)」(週2回)の28人の学生(1年生17名、2年生11名、男女共に14名ずつ)を対象に行われ、4人一組の各グループが"For a better environment: what we should/shouldn't do in the fight against global warming"というタイトルでプレゼンテーションを行った。プレゼンテーションの準備を含むプロジェクト全体の手順は次の通りである。
(1) Group making; (2) Brainstorming [a. Topic choice, b. Idea generation];
(3) Draft making; (4) Draft revision; (5) Practice; (6) Presentation; (7) Evaluation
補遺1はプレゼンテーションに使用された原稿(教師による必要最低限の修正入り)である。上記のプロセスを通じて作成された最終productの一つとして参照されたい。(尚、今回のASTEの発表ではプレゼンテーションの様子を撮影したビデオも上映した。)
プロジェクト終了直後に行った"retrospective evaluation"のアンケートは補遺2を参照。各アクティビティでの自己評価を、5 = excellent; 4 = very good; 3 = satisfactory; 2 = not very good; 1 = poorという数値評価で、また記述によって、a) = "How did your group organise this process?"とb) = "Your assessment of this process"の2つの項目についてレポートを行わせた。
3.アンケート調査結果
ここでは(a)数値による評価、(b)記述による評価、の2項目についてアンケート調査結果をまとめた。(b)の記述による評価では、「肯定的な意見(positive)」、「中立的な意見(neutral)」、「否定的な意見(negative)」のそれぞれにつき割合の数値と、代表的、もしくは注目に値する記述を紹介する(カッコ内の数字は、その学習者がその活動につけた自己評価の数値である)。
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b. 記述による評価
Positive: 22/25 (88%)
「くじ引きだったので、今まで話をしたことのない人とも一緒になれて良かった。」(5)
「良いメンバーに恵まれたのでくじ引きでよかった。」(5)
「くじで決めた方が他学部の人と知り合えたし、プレゼンの幅が広がったと思う。」(3)
Neutral: 2/25 (8%)
「偶然にも友達がいた。」(5)
Negative: 1/25 (4%)
「メンバーに忙しい人が多く、最初のうちに全員揃うことがあまりなかったのがキツかった。」(3)
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b. 記述による評価
Positive: 15/25 (60%)
「多くの意見が出て良かったと思います。」(5)
「メンバー全員が積極的にアイディアを出せてよかったと思う。」(4)
「結構多くの意見が出たので、うまく自分の提案を出せたと思う。」(5)
Neutral: 2/25 (8%)
「二酸化炭素とgreenhouse gasのどちらをメインにするかで悩んだ。」(3)
Negative: 8/25 (32%)
「テーマは良く出ましたが、そこから話を発展させていくにはもっと知識が必要だと感じました。」(3)
「あまり多くの意見が出ずに終わった感じがする。」(2)
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b. 記述による評価
Positive: 13/25 (52%)
「もちろん自分も興味があったので非常に面白かった」(5)
「もっと他のグループとかぶるかと思ったけど、個性的にやれたと思う。」(3)
「みんなで沢山考えることができたから良かったと思う。」(4)
Neutral: 5/25 (20%)
「テーマを学科を結びつけて、ということだったので、改めて哲学が何かを考えていた。」(4)
「一番わかりやすいtopicだったけれど、説明するのは意外と大変なtopicでした。」(4)
Negative: 7/25 (28%)
「具体的な対策をあまり出せなかった。話が大きすぎてまとめるのに苦労した。」(3)
「時間があまりなく、ありきたりなトピックを選ばざるを得なかった。もう少し深い内容も触れたかった。」(3)
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b. 記述による評価
Positive: 15/24 (63%)
「分かりやすい、ビジュアル的な表ができて、とてもよかった。」(5)
「本を図書館から借りた人もいたりと、それぞれがアイディアを出し合うことができた。」(4)
「自分の専門を受け持つことで、なかなかはかどった。」(4)
Neutral: 1/24 (4%)
「抽象的な話も出しつつ、具体例も出し、分かりやすくなるべく心がけました。」(3)
Negative: 8/24 (33%)
「もっと深く突っ込んだ意見を出しても良かった。」(4)
「少し2人に頼ってしまった。」(3)
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b. 記述による評価
Positive: 13/26 (50%)
「全員〆切に間に合い、なかなかの完成度だったように思う。」(5)
「スラスラとみんな書けていたし、スムーズに集めることができた。」(5)
「なかなか進まなかったけれど、最終的にはみんなしっかり作ることができました。」(4)
Neutral: 5/26 (19%)
「Draftとhandout,レジュメノ違いがわからない。」(2)
「英語にするのに苦労した。」(3)
Negative: 8/26 (31%)
「日本語を作った人と英語にした人が違うのがやりにくくなってしまった。」(4)
「なかなかみんなの文章が集まらなくて大変だった。」(5)
「「ロシアについて」というのが漠然としていて困った。」(4)
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b. 記述による評価
Positive: 7/24 (29%)
「私的には、この作業が一番内容の濃いものとなって勉強になった。」(5)
「これのおかげで相手にわかりやすく伝えなくては、と思った!」(4)
Neutral: 1/24 (4%)
「まあ普通だと思う。」(5)
Negative: 16/24 (67%)
「他の皆の分をちゃんと読んでいないノ。」(3)
「全員でもっと相談できればよかったです。」(4)
「しっかりやっておくべきだった。」(2)
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b. 記述による評価
Positive: 3/27 (11%)
「本番への緊張感が和らいだ。」(4)
Neutral: 4/27 (15%)
「個人的にはがんばった。」(4)
Negative: 20/27 (74%)
「一回みんなで読み合わせをした方がよかった。」(4)
「リハーサルしてませんノ。」(2)
「みんなで練習できなかったのと、時間が無くて暗記できなかったのが残念。」(3)
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b. 記述による評価
Positive: 14/27 (52%)
「クイズなどを織り交ぜてできたところが良かったと思う。」(4)
「楽しくやれた。」(4)
「集まれなかった分、直前に「前に立つ人は発表する人だけの方がわかりやすい!」など、アイディアを出せて良かった。」(4)
Neutral: 4/27 (15%)
「緊張しすぎて自分はダメだったけれども他のメンバーはきちんと暗記をしていて素晴らしかった。」(3)
Negative: 9/27 (33%)
「写真などを使ったのは良かったが、しっかりと暗記できていなかった。」(3)
「声がもっと出たらよかった。焦ってしまった所もあった。」(4)
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b. 記述による評価
Positive: 9/21 (43%)
「メンバーそれぞれの評価が一致することが多く、良かったです。」(4)
「チーム全員の意見が反映できたと思う。」(4)
Neutral: 5/21 (24%)
「他のグループが踏み込んだ内容だったので驚いた。」(4)
「他の班の意見を注意深く聞いた。自分の班には無かった意見を聞くのは参考になる。」(3)
Negative: 7/21 (33%)
「基準が不明確で評価がばらけてしまった感もある。」(3)
「どの班も一生懸命取り組んでいるのがわかるから点をつけずらかった。」(4)
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b. 記述による評価
(i) 英語力の向上について - positive
「自分で文章を英語にしたりしなければいけないので英語の力はつくと思います。このように主体的にやった方が授業を聞いてるだけより力がつくと思います。」(4)
「グループワークは、インターネットで調べたり、文章を書いたり、とても英語の向上になると思った。先生の授業を聞くのも、とても勉強になるけれども、自らインターネットで英文を読んだり、essayを書いたり、presentationで英語を人前で話したり、とても学べた。」(4)
「細かい文法が身に付いた。人前で堂々と英語を話せたので自信がついた。」(4)
「普通の授業よりも得られるものは多かった。英作文、スピーキング能力等、総合的な英語能力を必要とした。」(4)
「こういったプレゼンはしっかりと英作文をし、音読を繰り返さないと成り立たない。その点で英語力の向上に役立つと思う。」(4)
(ii) 英語力の向上について - negative
「受身でいられないので自分の頭を使うことが多く有意義な授業だと思うが、原稿についての修正がないので英語力が向上したのか疑問な部分もある。」(3)
「自分自身ではあまり向上はしないかな、と思ってしまいました。良い刺激にはなりましたけれど。しかし、自主的に考える、ということはとても良いことだと思います。主体的ばかりもどうかと思いますがノ。」(4)
(iii) グループワークのメリットについて
「色々調べることによって新しい知識を得られること、自身に責任がかかるため積極的に学習に参加するということがあります。」(4)
「グループでやることにより、様々な人の意見が聞け、自分の仕事に責任を持てました。」(5)
「グループワークをすることによって、コミュニケーションが磨かれることはもとより、責任感などいろいろなものが活性化される。」(5)
「グループワークはみんなで協力できるし、友好な関係も作れるから非常に良いと思う。またやりたいです。」(4)
「互いにコミュニケーションをとって、意見を言ったりすることで、自分では気付かない所に気がつきました。」(4)
(iv) グループワークのデメリットについて
「グループワークは、やるのはグループだったが、細かい作業は個人になってしまうのでそこが問題だと思う。」(4)
「意見をまとめるのが少し大変な時もある。なかなかグループで集まることができないこと。」(4)
「面倒くさいところ。テーマに沿って話すべきスピーチがやりにくい。一貫性が無い。」(4)
「グループのメンバーの中で、どうしても積極性に差が出てしまうため、一部のメンバーに頼りがちになってしまうこと。」(4)
「グループでは、文を作る時にmain topicを一貫して書くのが難しいので大変でした。」(4)
4.考察
(1) Group making
グループ作りをする際に要望を聞いたところ、「くじ引きで」という声が圧倒的多数であった。自分の気の合う仲間で固まるのではなく、話をしたこともないクラスメートとの交流を望んでいたようであった。要望に応えた結果、非常に肯定的な評価が多かった。
(2) Brainstorming (on the whole)
数値と記述による評価の両方で不満足を表す意見が少なからずあったことに注目したい。一つの原因としては、学生達がこのようなディスカッション形式で物事を進めていく方法に慣れておらず、role-taking (e.g. ヤfacilitator', ヤelaborator', ヤrecorder', ヤevaluator')が上手く機能していなかった可能性が挙げられる。今後の指導では事前にrole-takingについてのexplicit instructionも視野に入れて行きたい。
(3) Brainstorming (Topic choice)
テーマについて、自分の所属する学科の観点を入れて論じることを求めたので、その点で興味深いと感じる学生と難しいと感じる学生に分かれたようである。「もう少し深い内容も触れたかった」という意見からは、大学レベルの専門性でテーマを追求したかったが、それが上手く行かなかったフラストレーションが読み取れる。
(4) Brainstorming (Idea generation)
肯定的な評価・意見の多さは、様々なアイディアを出し合えた事や「分業」がうまく機能したことを表している。その一方で、議論が不十分だったり、「全員参加」が不十分で、特定の学生の活躍に頼ってしまったグループもあったことが窺われる。
(5) Draft making
実際に原稿作りは個人に任されたものの、それを一つにまとめて一貫性のある作品にまとめるためにはbrainstormingと同じように「共同作業」が重要な要素であった。それが上手く行ったかどうかが評価の分かれ目になっているようである。個人的に学科の専門分野の視点を絡めてテーマを論ずることに難しさを覚えた学生も見受けられた。
(6) Draft revision
数値による評価も少し低めであったが、記述による評価ではかなり「もっとうまくやるべきであった」という意見が多かった。良いプレゼンテーションのためには原稿の推敲が必須であるが、教師の視点からもこの作業を少し疎かにしている様子が見られたので、この結果は妥当と思われる。ここをしっかりやった学習者は「この作業が一番内容の濃いものとなって勉強になった」と述べており、この活動こそ学習効果が高く、またプレゼンテーションを成功に導く大きな鍵の一つであったことが理解できる。
次回同じようなプロジェクトがあれば、おそらくこの学習者達はここにより力を入れると思われる。推敲の重要性が学べたのであれば何よりと思う。
(7) Practice
この活動は数値でも記述でも否定的な評価がかなりの割合を占めた。プレゼンテーションでは上記draft revisionとリハーサルが成否を決めるといっても過言ではない。学部学科が違う学生達の集まりなので、授業時間以外に集まったり時間を取ったりすることは難しいことであった。それゆえ授業時間内での練習が重要であったのだが、限られた時間を有効に使ってプレゼンテーションに必要なスキルを磨くかという点では多くのグループで甘さが見られ、実際のプレゼンテーションの状況をきちっと頭に描き、暗記やジェスチャーなどの練習をするまで至ったグループは少数であった。しかし、後から振り返ってここがうまくできなかったと反省できたのは今後の糧になる。高校卒業までは大学受験のための文法学習などに追われ、このようなプロジェクトやプレゼンテーションのための技術を身につける機会もあまりなかったと思われるので、今後はぜひディスカッションやプレゼンテーションなどの英語コミュニケーションのスキルを磨いていって欲しいと思う。
(8) Presentation
肯定的な評価として、プレゼンテーションに工夫を凝らし、またグループでの発表そのものを楽しんだという意見が出た。しかしリハーサル不足で、本番で思うようにできなかった学生は準備不足を痛感したようである。
(9) Evaluation
数値的には肯定的な評価が多かったが、記述による評価では苦労の跡も見受けられた。特に、「基準が不明確で評価がばらけてしまった感もある」という意見から、プレゼンテーション評価にもリハーサルを行うなどして、ある程度共通の基準を作って臨ませる必要があると感じた。(どのような出来ならどの点数を付けるか等)
しかし、「メンバーそれぞれの評価が一致することが多かった」という意見もあり、プレゼンテーションの評価について一定の共通認識を持っていることも窺える。
(10) Total performance evaluation
数値的評価では、学習者の大多数が良い点数を付け、このプロジェクトでの自分の出来に対する満足度が高いことが分かった。
記述による評価では主に、(i)英語力の向上について、(ii)グループワークのメリット/デメリットについて、の2つを書いてもらった。(i)については、"autonomous learner"の姿勢を身に付け、自主的な学習姿勢を持った学習者にとっては良い学習機会となったことが分かる。「原稿についての修正がないので英語力が向上したのか疑問な部分もある」という意見に対しては、プロジェクト終了後しばらく経ってから教師が手直しした原稿を渡し、それぞれグループで確認させることによってケアをした。(ii)に関しては、グループワークによって活性化されるコミュニケーションや役割分担などの利点や、逆に役割分担が面倒だったり、一つのテーマを追求するのに一貫性が失われるなどの欠点が指摘され、今後指導の際の参考としたい。
5.まとめ
数値評価から見ると、全体として非常に満足度の高いプロジェクトであったことがわかる。しかし記述による評価を見ると、作業によっては苦労したり反省点が多かったことが分かる。プロジェクトに参加した学習者達がそれぞれ課題を見つけ色々と考えたことは、autonomous learnerとなるのに正しい方向を辿ったことに他ならないと考える。また、これだけ色々な考察が出てきたことは、この学習者達がautonomous learnerとなるための高いポテンシャルを有していることの証明でもある。
英語学力向上と、このグループワークプロジェクトに関しては、主体的学習が効果的であるとする意見が多かった反面、もう少し教師からの指導が必要だったという意見もあった。この2つのバランスを取ることが肝要であり、今後さらに指導方法を改善していきたい。
Learner autonomyを主眼としたgroup workは、他者と交流する姿勢、グループの中での責任感、また英語学習における自発的なlearning strategyの育成という点などにおいて有意義である。自分達がプロジェクトに主体的に関わった立場として今後の自分達の活動に生かすと共に、後輩たちへのアドバイスを書いてもらえば同じ立場として非常に参考になることであろう。
参考文献
Benson, Phil (2001). Teaching and Researching Autonomy in Language Learning. London: Longman.
Dickenson, Leslie (1993). "Talking Shop: Aspects of Autonomous Learning". ELT Journal 47 (4): 330-336.
Dornyei, Zoltan & Tim Murphey (2004). Group Dynamics in the Language Classroom. Cambridge: CUP.
Ekbatani, Glayol and Herbert Pierson (eds.) (2000). Learner-Directed Assessment in ESL. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum.
Murphy, Tim (1994). "Tests: learning through negotiated interaction". TESOL Journal 3: 12-16.
Scharle, Agota & Anita Szabo (2000). Learner Autonomy: A Guide to Developing Learner Responsibility. Cambridge: CUP.
Victori, Mia (2000). "Views on self-access language learning: a talk with Leslie Dickinson, Lindsay Miller, Gill Sturtridge and Radha Ravindran". Links & Letters 7: 165-180.
吉田研作 (2002). 「英語が使える日本人」の育成と展望 於シンポジウム「『英語が使える日本人』を考える」 2002年12月8日
吉田国子 (2003). 「インターネットを含むマルチメディアを利用した独自教材の作成」 武蔵工業大学環境情報学部情報メディアセンタージャーナル2003.4 第4号: pp. 67-70.
補遺1
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A Study on Japanese Secondary School Students' Beliefs about English Learning(日本人の高校生の英語学習に関する学習観)
鈴木 栄 (神奈川総合高等学校) sakae-s@kanagawasohgoh-h.ed.jp |
& | 熊澤 孝昭 (関東学院大学) takakuma@mwa.biglobe.ne.jp |
ASTE第138回例会 | 2005年11月12日 |
文献研究
Beliefとは何か
人の行動は、その裏に行動者の意志あるいは考えがある。無意識にその意志・考えに従って行動している場合が多い。学習者のbeliefは、教室における生徒の学習へのstrategy、motivationなどに、教師の場合は教え方に影響を与えるということで注目をされてきている。学習者のbeliefを測るinventoryを開発したHorwitzはbeliefsを特に定義していないが、渡辺(1990)は、「言語学習の様々な側面・次元について知っていること・信じていること」であると定義している。岡崎(1996)は「確信」と訳した。片桐(2005)は、日本語論文では、言語学習観、信念、信条、確信、ビリーフなどと訳されているが、ビリーフを用いるとし、学習者のビリーフとは、「言語学習を管理する学習のメタ認知的な支えであり、学習ストラテジーにも影響を与える」としている。学習者のビリーフとは、「学習者が、どのように言語を学習するかという想定である」(Chawhan & Oliver, 2000)、あるいは、Bernat and Gvozdenko(2005)が指摘したように、学習に関する"個人の神話(personal myths)"かもしれない。Wenden(1999)はmetacognitive knowledgeは、"a system of related ideas, some accepted without questions and other validated by their experience"(p. 436)としているが、beliefについては、 metacognitive knowledgeとは違うと述べている。その理由として、beliefはvalue-related の傾向があり、knowledgeよりも定着度が強いとしている。その他のbeliefの定義では、「隠れた理論(implicit theories)」(Clark, 1988), 「小さな理論(mini-theories)」(Hosenfeld, 1978),「学習の概念(conceptions of learning)」(Benson & Lor, 1999)など様々である。本稿では、beliefs about learning を「学習観」、beliefを「ビリーフ」と表記することにする。
ビリーフ研究の必要性
Wenden(2001)は、外国語学習者のビリーフについてはneglected variableと述べている。Pajares(1992)は、"the earlier a beliefs is incorporated into the belief structure, the more difficult it is to alter, for these beliefs subsequently affect perception and strongly influence the processing of information. It is for this reason that newly acquired beliefs are most vulnerable" (p.317)と主張している。学習観は小学校や中学校(Chin & Brewer, 1993; Paris & Byrnes, 1989), や 青年期の初期(Cantwell, 1988; Schommer, 1993), あるいは大学に入る前までに(Weinstein, 1989)構築されるとある。高校までにはある程度のビリーフが固まっていると考えられる。ビリーフが存在する時間が長いほど変えることが難しいことを考えると、高校生レベルでのビリーフの確認と再編成が必要であろう。小学校に英語教育が完全に導入されると、中学校レベルでのビリーフの調査とその修正が必要になってくると考えられる。学習者のビリーフの研究が必要であるのにはいくつかの理由があげられる。ビリーフとは、メタ認知に属し、考えの中に「信じているもの」「こだわっているもの」として持っているものである。質問をされて自覚しているものとしてビリーフが出てくる場合もあるが、多くの場合は、表面には出てこない(加藤・山岡、2000)。しかしながら、学習者は、自らの内部に存在するこのビリーフに従って行動をし、学習のストラテジーを組み立てていく。例えば、「外国語の学習には文法を知ることが重要である」と信じている学習者は、自分の学習を、文法学習を中心に組み立てていくであろうし、逆に、文法を含まない授業に対してはネガティブな評価をすることになると想定される。従って、学習者のビリーフを知ることは、教える側にとってシラバスを作りあげる上でも重要である。Wenden(1987)の研究では、インタビュー調査の分析から、学習者が言語学習についてビリーフを持っていること、そのビリーフに従った行動をしていることを指摘している。
ビリーフが学習者のメタ認知的な支えであると考えると、それを変えることによって、学習者のストラテジーが変化すると想定される。学習者がどのようなビリーフを持っているかを知ることにより、学習者のストラテジーが想定できる。つまり、間違ったストラテジーを実践している学習者は、誤ったビリーフを信じていることになる。学習者が、より効果的な学習をすすめ、よい結果を出すためには、ビリーフを変えるような働きかけが必要となってくる。教師の側から見ると、そうした学習者のビリーフを知ることが授業運営の役に立ってくる。橋本(1993)は、学習に悪影響を及ぼすビリーフを修正できる可能性があり、それが学習ストラテジーに影響を与えうると述べている。Nishioka(2002)は、高校生対象のビリーフの研究の結果を見て"Awareness of the beliefs that my students bring to the classroom can help me to become not only more realistic setting goals but also to provide more thoughtful guidance for my students"(p. 22)と述べている。ビリーフ研究の結果を教師にフィードバックすることによって、その教師が自覚していなかった自身の特徴・傾向に対する意識が高められる点で、教師教育に寄与する(加藤・山岡、2000)ことへの指摘もある。これと同様のことが、学習者のビリーフ研究にも言える。つまり、学習者は、フィードバックをもらうことで、自らの学習への意識を確認し、学習ストラテジーを立て直すことに役立つと思われる。学習者のビリーフの修正をおこなっても、それが直接的にいい結果に繋がるのではなく、修正したことでポジティブ思考が高まり、motivationが高まることにより、結果的にはいい結果を生むと考えられる。ビリーフの研究の重要性が言われているものの、ビリーフの研究が十分にされていない理由の一つに、「それをどう対処していいのかわからない」ことがあげられる。ビリーフを変えるという事に対しても、倫理的にいいのかという問いかけもあり、どのようにビリーフを変えていけるのかがわからないということであろう。学習者のビリーフを修正するというよりも、教師は、様々な学習の形を示すことで、学習者が多様な学習経験から自らに合った学習方法を選べればいいのではないだろうか。
ビリーフ研究の手段(BALLIなど)とその改訂
ビリーフを探る方法としては、インタビュー調査、質問紙による調査などがある。質問紙は、生徒にとっても自己の学習観を確認できる手段であり、質問紙に答えることで学習観を考えることになり、結果的には早く、効率のいい学習者になる手助けをすることを期待できる。質問紙の有効性については、Fox (1993)のteaching assistantsに対する研究の結果として、「TA自身がもっている言語に対する認識を気づかせるためにトレーニングの初め質問紙に答えさせることにより、TAは自分自身の言語学習歴を振り返り、生徒達の質問をどのように扱うかを考える機会となる」と述べている。インンタビューでは、面と向かい話をするため、本当のことを話すかどうか、つまり、相手に好印象をもたれたいために、相手が望むような回答をしてしまうことも考えられる。ビリーフ研究で、もっとも頻繁に使用されている質問紙は、Horwitz(1988)が作ったBALLI(The Beliefs About Language Learning Inventory)である。Horwitzは、外国語およびESLを担当している教師に外国語学習のプロトコルを取り、それを基に、5つのカテゴリーで34項目の質問を作成した。5つのカテゴリーは、_difficulty of language learning,_foreign language aptitude, _the nature of language learning,_learning and communication strategies,_motivations and expectations である。BALLIは、日本語を外国人に学習させる場で多く使われている。Horwitz が、これを作った動機は、アメリカの大学にいる外国人の英語学習への意識を知ることにあったことを考えれば、日本語を外国語として学習する学生に対するBALLI使用はcontextが似ていることから納得がいく。しかしながら、学習者のcontextは多様化しており、まして日本の中でアンケートを実施するのには、内容が合わない場合も出てくる。そこで、Horwitzも示唆しているように項目を再考し、改訂する必要性がある。小玉・古川(2000)は、質問紙をつかった調査は、実施が容易であり、多くの被験者に同時に調査が可能であるという利点を指摘しながらも、問題点として2点あげている。第1は、回答者が調査項目を読みとる際に作成者の意図と違う解釈をする可能性があることである。これに関しては、第1回目の研究(Suzuki & Wada, 2004)では、BALLIの改訂版を作成する過程で、misfit項目について被験者から無作為に抽出してインタビューをおこない、質問項目を理解しているか確認し、質問の削除、改訂をおこなった。第2の懸念として、質問紙による調査に対して被験者が正直に回答するとは限らない点を指摘している。これは、インタビューによる調査についても同様のことが言える。読み手・聞き手がいる限りはこうしたバイアスは完全になくすことは不可能である。岩井・岩澤(2004)は、BALLIについては、回答の不安定さや不確実性が指摘されているものの、「先行調査の結果を見る限りでは、ある集団のビリーフの傾向を調べる装置としては十分に機能していると思われる」と述べている。
BALLIを使った英語学習者の研究
Horwitzの作成したBALLIによる研究の結果は前に記した。Sakui & Gaies(1999)は、日本人の大学生を対象に、Horwitzの作成したBALLIを日本人学習者向けに質問内容などを改訂し、調査をおこなった。因子分析の結果、でてきた因子は、_Contemporary Orientation,_Traditional Orientation,_Quality and Sufficiency of Classroom Instruction,_FL Aptitude and Difficultyであった。
日本の高校生を対象とした研究では、次の3研究について述べたい。Nishioka(2002)は、教育困難校と言われる高校の生徒184人の英語学習への意識と、4人の教師の意識をBALLIを使い調査した。教育困難校の生徒の学習へのビリーフは何か、それらは進学校の生徒のものとどう違うか、生徒のビリーフと教師のビリーフはどう違うか、1学期で生徒のビリーフは変化するのか、に焦点をあてた。その結果、2つのことが顕著であった。1つは、「生徒は英語学習について絶望的であった」ことであり、もう1つは、「生徒は教師の影響を強く受けている」ということであった。しかしながら、進学校の生徒のビリーフと比較して、西岡は自分が考えていた生徒への考えと違った結果が出たと書いている。英語学習には失望しつつも、生徒の3分の_の生徒が、英語ができれば将来、仕事に就く際に有利になると考えており、4割の生徒は英語が話せればそれを使うチャンスが増えると考えていた。これはNishiokaが考えていたことと逆の結果であり、"My misconceptions are reinforced through everyday experience in classroom"(p. 21)と述べている。そして、"my beliefs about the students may have been skewed."(p. 21)と結んでいる。進学校との比較では、進学校の生徒は、英語を受験手段であると考えており、かれらの英語学習への動機づけは、instrumental motivation(受験・能力試験などを目指した学習動機)であり、Nishiokaの生徒の動機づけはintegrative motivation(学習している言語での交流を目指した学習)であり、Dornyei(1994)は、初級の学習者には、integrative motivationの方が有効であると主張しているが、Nishiokaのlow proficiencyの生徒には逆のことが言えると述べている。Oda(2004)は、中・高一貫高の生徒約1700人にBALLIを使って調査をおこなった。結果として、生徒の英語学習への動機は実用的なことに限られており、外国文化・人に興味はそれほど示さなかった。しかしながら、コミュニカティブな教え方に関してはポジティブな考えを持っていることがわかった。Odaは、「生徒は、学習に対するビリーフを持って授業に来ることを心に留め、ビリーフは変えることが難しいが、教師が生徒のビリーフを"adjust or correct"(p.86)ことはできるだろう」と結んでいる。鈴木(2006)は、日本人の高校生向けに改訂版BALLI(56項目)を作成し、その信頼性と妥当性を検証することと、日本人の高校生の英語学習に関する学習観を探ることを目的とし、1251名の高校生を対象に調査をおこなった。結果、探索的因子分析により、5つの因子を抽出した。第一因子は、自己の英語力への満足度(Satisfaction for Own Proficiency)、第二因子は、教師の授業内使用言語(Teachers' Use of Language in Class)、第三因子は、教育に対する満足度(Satisfaction for the Education)、第四因子は、現代的志向(Contemporary Orientation)、第五因子は、従来型学習法への志向(Traditional Orientation)であった。記述統計では、高校生が、自己の英語力に満足していないこと、英語学習を学校以外でも学習したいという結果が出た。
本研究の目的
本研究の目的は以下の2点である。
(1)日本人の高校生向けの改訂版BALLIの信頼性・妥当性を検証すること。
(2)日本人の高校生の英語学習に関する学習観の傾向を探ること。
方法
参加者は、関東の高校生1251名(私立1校、公立5校)である。質問紙は、56項目を含む改訂版BALLI(Suzuki & Wada, 2004)である。データ分析の手順として、まず、EXCELを使い、欠乏値と4件法のスケール上にない1~4以外の箇所に記入したケースは削除した。次に、SPSSを使い、平均、標準偏差、歪度、尖度を含む記述統計の結果から標準分布をなしていない項目をデータ変換した。また、Z得点などを使い、ある値を超えたケースははずれ値とみなし、データから削除した。よって分析に用いられたサンプル数は1143名となった。次に構造方程式モデル(以降SEM)のモデル作成過程について述べる。本研究の目的は日本人高校生にとって信頼性と妥当性が高い質問紙を開発するということで、鈴木(2006)が行った探索的因子分析の結果をもとに確認的因子分析モデルを作成する。探索的と確認的因子分析の違いだが、探索的因子分析は端的に従来型の因子分析と考えてもいい。この手法は質問紙の項目から因子を抽出するのが目的で、因子数や構想概念が定かではなく、質問紙に潜在する因子数と因子負荷などを探索するために用いられる。確認的因子分析はSEMのモデルの一つで、主に探索的因子分析で得た結果と同じ結果になるかを確認するために用いられる。本研究では3つの先行研究(Horwitz, 1987; Sakui & Gaies, 2001; 鈴木、2006)にある結果がEFL高校生のデータに合っているかを検証するため確認的因子分析を用いることとする。まず、Horwitz(1987)がESL学習者対象に開発したBALLIのオリジナル版にあるセクションを下位尺度とみなし、Horwitzが仮定した確認的因子モデルを作成した。同様に、Sakui and Gaies(2001)が改訂し、日本人大学生に実施した探索的因子分析の結果をもとに確認的因子分析モデルを作成した。そして、どのモデルが最も日本人高校生から収集したデータに合っているかを比較検証した。なお、SEMの分析にはAMOSを用い、母数を推定するため、最小2乗法を用いた。母数を推定するというのは、モデルから求めた分散と共分散と、データから得られる分散と共分散にできるだけフィットするように、母数を合わせることを指す(涌井、2003)。
結果
表1は全56項目の記述統計を記す。この結果から参加者がもっているおよその学習観の傾向を理解することができる。平均値が顕著に低い項目は4、20、23、44、45、46、47で、自己の英語力に満足していないことと、さらに英語を学校以外の環境でも学習したいという結果がでた。逆に平均値が3を上回る項目は1、2、8、12、14、18、24、27、31、39、55で、特定の英語学習法や英語が話せる利点などを問う項目内容である。標準分布から意見が分かれた項目をみると、36と43の値が大きい。英語をすればするほど好きになると思う学生と嫌いになる学生とではっきりと分かれるようだ。英語学習の目的は様々で英語を受験のため学んでいる学生もいれば、そうでない学生もいるらしいことが推測される。
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N | |
M | |
SD | |
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1 子どもの方が、大人より英語を習得するのが容易である。 | 1143 | 3.05 | 0.64 | |||
2 英会話の授業は楽しくあるべきだと思う。 | 1143 | 3.52 | 0.55 | |||
3 英語を上手に読み書きできるようになるには、学校の英語の授業だけで充分である。 |
1143 | 2.03 | 0.54 | |||
4 将来、私は英語をとても上手に話せるようになると思う。 | 1143 | 2.01 | 0.70 | |||
5 英語を話すために、英語圏の国々について知ることは必要だと思う。 | 1143 | 3.02 | 0.60 | |||
6 もし英語でわからない単語があったら、意味を自分で考えてみる。 | 1143 | 2.81 | 0.67 | |||
7 もし自分で英語を毎日1時間ずつ勉強するとしたら、5年で英語が流暢になると思う。 |
1143 | 2.45 | 0.73 | |||
8 英語を習得する上で、繰り返したり、練習をたくさんすることは重要なことである。 |
1143 | 3.51 | 0.54 | |||
9 他の日本人の学生のまえで英語を話すのは恥ずかしい。 | 1143 | 2.83 | 0.76 | |||
10 もしはじめの段階で、間違いが許されたら、その間違いを後で直すことは、難しいと思う。 |
1143 | 2.65 | 0.70 | |||
11 英語を習得するということは、文法をたくさん学ぶことである。 | 1143 | 2.49 | 0.68 | |||
12 テープを聴いたり、英語のテレビを見ることは、英語を学習する上でとても大事なことである。 |
1143 | 3.32 | 0.58 | |||
13 女子の方が男子より英語を習得するのが上手である。 | 1143 | 2.05 | 0.67 | |||
14 英語がとても上手に話せるようになったら、英語を使う機会が数多くあると思う。 |
1143 | 3.08 | 0.74 | |||
15 英語を話す方が、聞いて理解するより易しいと思う。 | 1143 | 2.49 | 0.77 | |||
16 英語の学習は、学校のほかの科目を勉強することと異なると思う。 | 1143 | 2.49 | 0.66 | |||
17 英語を習得するということは、日本語から英語に翻訳するということである。 | 1143 | 2.23 | 0.62 | |||
18 英語を上手に話せるようになったら、将来いい仕事をみつけることに結びつくと思う。 |
1143 | 3.06 | 0.74 | |||
19 英語を読み書きすることの方が、話したり聞いて理解することより、易しいと思う。 |
1143 | 2.56 | 0.73 | |||
20 数学や科学が得意な人は、英語を習得するのが上手である。 | 1143 | 1.91 | 0.53 | |||
21 日本人は、英語を話すことが大事なことであると思っている。 | 1143 | 2.73 | 0.76 | |||
22 外国語を話せる人は、頭がよいと思う。 | 1143 | 2.71 | 0.78 | |||
23 英語を上手に話せたり聞けたりするようになるには、学校の英語だけで充分である。 |
1143 | 1.85 | 0.58 | |||
24 習得するのに簡単な言語と難しい言語があると思う。 | 1143 | 3.13 | 0.55 | |||
25 外国人の先生から英語を習ってのみ英語が上手に話せるようになる。 | 1143 | 2.11 | 0.58 | |||
26 英語を習得する才能をもっている人がいると思う。 | 1143 | 2.66 | 0.75 | |||
27 英語を話したり聞いたりすることのほうが、読み書きより役に立つと思う。 | 1143 | 3.08 | 0.67 | |||
28 クラスメートと英語を話すことで英語が上達すると思う。 | 1143 | 2.62 | 0.65 | |||
29 英語を充分勉強しないから、間違えるのだと思う。 | 1143 | 2.80 |
0.70 | |||
30 英語で話すとき、まず日本語でどういうかを考えてから英語に訳す。 | 1143 | 2.93 | 0.65 | |||
31 教えられたことを忘れてしまうことがあることは普通だと思う。 | 1143 | 3.24 | 0.56 | |||
32 自分の間違いを、全部先生になおしてほしいと思う。 | 1143 | 2.46 | 0.71 | |||
33 英語を話す人たちコミュニケーションをするのに役立つから、英語を勉強している。 | 1143 | 2.76 | 0.68 | |||
34 英語を理解するにはまず、日本語に訳さなくてはならない。 | 1143 | 2.72 | 0.65 | |||
35 すでに外国語を話せる人にとっては、別の言語を習得するのは易しいと思う。 | 1143 | 2.25 | 0.70 | |||
36 英語を勉強すればするほど、楽しくなってきている。 | 1143 | 2.57 | 0.84 | |||
37 同じ年頃の外国人が英語を話しているのが聞こえたら、英会話の練習をするために、その人のところに行って話しかけたい。 |
1143 | 2.23 | 0.79 | |||
38 私は今の英語教育に満足している。 | 1143 | 2.22 | 0.69 | |||
39 正しく話せるようになったら、英語で話してもいいと思う。 | 1143 | 3.04 | 0.73 | |||
40 外国人の先生は日本語を使える方がいいと思う。 | 1143 | 2.90 | 0.74 | |||
41 英語の授業で、日本人の先生は日本語で説明してくれる方がいい。 | 1143 | 2.91 | 0.69 | |||
42 英語の授業で、外国人の先生も日本語で説明してくれる方がいい。 | 1143 | 2.47 | 0.75 | |||
43 私は受験のために英語の勉強をしている。 | 1143 | 2.48 | 0.80 | |||
44 英語を勉強した時間を考えると、私は自分のスピーキングの上達度に満足している。 |
1143 | 1.80 | 0.58 | |||
45 英語を勉強した時間を考えると、私は自分のリスニングの上達度に満足している。 |
1143 | 1.97 | 0.67 | |||
46 英語を勉強した時間を考えると、私は自分のライティングの上達度に満足している。 |
1143 | 1.94 | 0.64 | |||
47 英語を勉強した時間を考えると、私は自分のリーディングの上達度に満足している。 |
1143 | 2.01 | 0.66 | |||
48 英語の意味を理解するためには、和訳を通じてというよりも、直接実物や映像を見たり、状況や文の前後関係から学んだ方がいい。 | 1143 | 2.92 | 0.58 | |||
49 英語の題材は日常生活に関連している方がいい。 | 1143 | 3.11 | 0.55 | |||
50 新しい言葉や表現は、最初目からではなく耳から学ぶべきである。 | 1143 | 2.87 | 0.66 | |||
51 生徒同士の英語のやり取りよりも、先生と生徒とのやり取りの方が効果的である。 |
1143 | 2.59 | 0.65 | |||
52 文法の授業は、先生の詳しい説明よりも、生徒に考えさせて規則を見つけさせるほう効果的である。 |
1143 | 2.34 | 0.64 | |||
53 英語で話す時、先生は特にゆっくり話すより、普通のスピードの方が生徒の勉強になる。 |
1143 | 2.54 | 0.67 | |||
54 先生は、指導計画にそって授業を進めるべきである。 | 1143 | 2.29 | 0.63 | |||
55 英語の言葉や文法を習いながら自分の考えを表現することは、英語を習得するのにとてもいい方法である。 |
1143 | 3.03 | 0.53 | |||
56 Eメールやインターネットを使った授業は、英語の勉強や異文化交流に役立つ。 | 1143 | 2.98 | 0.65 | |||
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df | |
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GFI | |
CFI | |
RMSEA | |
AIC | |
Horwitzモデル | 220 | .00 | .924 | .634 | .055 | 1103.037 | ||||||
Sakui & Gaiesモデル | 269 | .00 | .882 | .743 | .068 | 1785.781 | ||||||
EFL高校生Beliefsモデル | 160 | .00 | .953 | .911 | .046 | 648.429 | ||||||
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Horwitzモデル | |
Sakui & Gaiesモデル | |
EFL高校生Beliefsモデル | |
セクション1 | _=.28 項目=4,19,24,7,15 |
_=.73 項目=4,12,8,37,14,33,18,36,2,5 |
_=.67 項目=5,12,14,28,33,36,55 |
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セクション2 | _=.42 項目=20,26,13,1,22,35,16 |
_=.61 項目=34,42,41,17,11 |
_=.57 項目=40,41 |
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セクション3 | _=.10 項目=5,11,17 |
_=.76 項目=38,46,44,47,45,23,3 |
_=.61 項目=3,23,38 |
|||
セクション4 | _=.24 項目=8,37,39,10 |
_=.32 項目=20,26,13 |
_=.84 項目=44,45,46,47 |
|||
セクション5 | _=.56 項目=14,33,18,21 |
_=.57 項目=11,17,30,34 |
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全体 | _=.65 k=23 |
_=.65 k=25 |
_=.63 k=20 |
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ASTE 2006年度前期予定 第140回例会 |
上智大学の言語学、応用言語学、言語教育関係のホームページ集
1)上智大学のホームページ
http://www.sophia.ac.jp/
2)上智大学大学院応用言語学研究会 CALPS HOME PAGE
上智大学の大学院で応用言語学を専攻した卒業生、または現在専攻している学生による HOME PAGE です。言語学、言語教育、応用言語学に関する関連サイト、短い記事や論文などが沢山載っています。興味のある方は是非一度立ち寄ってみてください。
http://www.ne.jp/asahi/calps/home/index.htm
3)上智大学外国語学部英語学科 HOME PAGE
英語学科が独自に運営しているホームページ。英語学科同窓会(SELDAA)ホームページへのリンクもあります。
http://www.info.sophia.ac.jp/engffs/index.html
4)上智大学外国語学部言語学副専攻監修 「言語研究のすすめ」
語学の色々な分野を紹介したエッセイ集です。
http://www.info.sophia.ac.jp/fs/fukusen/gengo/gensusu.htm
5)上智大学一般外国語教育センター
http://www.info.sophia.ac.jp/flcenter/
6)上智大学大学院応用言語学研究会
大学院応用言語学研究会のホームページです。院生が調べた論文の要約、そして、研究会で実施した研究報告等が読めます。
http://www.ling.sophia.ac.jp/applied/
7)英語学科のBritto先生が集められた英語学習サイトの宝庫!!
http://pweb.sophia.ac.jp/~britto/weblab-e.html
8)上智大学国際言語情報研究所(SOLIFIC)
http://solific.ling.sophia.ac.jp/
9)吉田研作のHome Page
http://pweb.sophia.ac.jp/~yosida-k
10)応用言語学交流会
首都圏の大学院で外国語教育や言語習得を専攻している大学院生同士の交流会です。
http://members.tripod.co.jp/kouryuukai/
11)NPO小学校英語指導者認定協議会
民間のNPOとして現在全国の小学校で始まっている英語教育の指導者を認定する組織です。
http://www.j-shine.org/
12)Asia TEFL
アジア諸国を中心とした初の国際英語教育学会です。
http://www.asiatefl.org/
13)TESOL International Research Foundation (TIRF)
TEFL関係の優秀な研究(博士論文を含む)に研究資金を提供しています。
http://www.tirfonline.org/
14)TOEFLは2005年から変わります(4技能全てがテストされます)
http://www.ets.org/toefl/index.html
ASTE 事務局 |